ボツリヌス療法外来
概要
- ボツリヌス療法は、主に脳卒中後で生じる筋緊張亢進(痙縮)に対して筋肉注射を行い、緊張緩和する治療法です。
- 緊張緩和を通じて、以下のような効果が期待できます。
- 腕や手を伸ばしやすく手洗い、着衣、爪切りなどの動作がやりやすくなる
- 足のつっぱりが緩和して歩行しやすくなる
- 装具がつけやすくなる
- 1度の治療で一般に2-3ヶ月の効果が期待されます。通常3ヶ月毎に注射を行います。
- 木曜午後のリハビリテーション科(担当 大本医師)外来で基本的に評価、施注を行っています。一般診療も行っているため、しばしばお時間がずれることがあります。
ご了承ください。
- 施注は医師(リハビリテーション科、脳神経内科)、リハビリ療法士、看護師のチーム医療で行っています。
注意点
治療の流れ、副作用など
- 効果は筋緊張(痙縮)の緩和で、直接的に筋力を増す効果はありません。緊張緩和により抵抗が減り動作がしやすくなることはあります(例えば肘屈曲の緊張が緩和して肘を伸ばしやすくなる、など)。
- 初回は問診、診察のみになります。
緊張している(痙縮のある)部位と程度、患者様のご希望を総合して注射の箇所と量を計画します。多くの場合複数箇所筋肉注射します。 逆に注射の効果が期待できない、その他問題があれば治療を見送ることがあります。
- 通常100〜最大600単位(薬剤量の単位)の量で筋肉注射します。
当院では1本50単位ずつ注射しますが1本を2箇所に分けることも多いので注射の箇所はもう少し増えます。
- 深い筋部位を中心に正確な部位同定のため超音波(エコー)や電気刺激を併用して注射します。
電気刺激の痛みが強いなど支障があればエコーのみで対応します。
- 注射当日は入浴を控え、シャワー程度でお願いしています。
- 反応性に個人差があるので、しばしば注射部位や量の調整が必要になります。
- 効果を最大化するため治療後、特に1ヶ月以内はストレッチをしっかりしていただくことが重要になります。注射のみでは効果が不十分のことがしばしばあります。当院では注射後短時間ですが療法士によるストレッチ、およびストレッチに関する指導を行っています。
- 治療は必ず3ヶ月以上間隔を開けます。短期間で繰り返すとしばしば効果減弱が生じると言われており、使用法としての決まりがあります。逆に効果持続が長ければ間隔を4ヶ月以上に延長することもあります。
- 副作用は軽度脱力や局所の発赤、疼痛などが時にあるとされています。通常疼痛が長引くことはなく、軽度脱力が生じても長くて1ヶ月程度で緩和するので、多くの場合様子を見ていただくことになります。
費用面
- 通常の保険診療では高額の薬剤費がかかります。
- 身体障害者2級以上をお持ちの方は高額医療の助成があります。最初の面談時に状況を確認、ご相談します。
その他
- 顔面けいれん(片側)、眼瞼けいれん、痙性斜頸にも施注を行っています。脳神経内科(担当 緒方)で対応します。
- ボツリヌスとは:ボツリヌス菌が生成する毒素は麻痺を生じる物質です。しばしば乳児にハチミツを食べさせてはいけないという話をしますが、それはボツリヌス菌が発生する毒素が筋肉を麻痺させるからです。しかしボツリヌス毒素は微量では筋力への影響なく筋緊張を低下させることが発見されました。現在この性質を利用して脳卒中後の筋緊張亢進(痙縮)、眼瞼けいれん、顔面けいれん、痙性斜頸などに応用されています。